長期レポ:ホンダ・インサイト 〜10年10万km越えでハイブリッドはどうなった? 〜
私はホンダの「インサイト」に乗っている。
初年度登録が2009(平成平成21)年なので、車齢はもうすぐ12年になる。
犬の年齢でいうと64歳に相当する。犬の年齢でいう必要はまったくないが、とにかく相当するのである。
走行距離は12万kmを越えている。
ただ最近のクルマは、ひと昔前のクルマと比べると10年10万kmという節目を越えた際のヨボヨボ感が、かなり少ない。まだまだ現役である。
1990年くらいまでの感覚だったら、10年落ちともなると「ああ、そろそろお役御免だね」という風情がクルマのあちこちから漂っていた。
しかし、近ごろのクルマは10年オチくらいじゃなんのその、現役さながらの色気を振りまくクルマも少なくない。
マンガ『サザエさん』の波平さんが54歳という設定で「意外に若い!」と驚くのは定番だが、それと同じような状況だ。
クルマの老化が遅くなったのは、防錆技術の進歩に寄るところが大きいと自動車メーカーのエンジニアから聞いたことがある。1980年代後半、自動車メーカーでは外板について「表面 錆5年-孔あき10年」が目標とされ、その目標をクリアするために“合金化処理溶融亜鉛めっき鋼板”というものが車体に採用され、耐用年数が向上したということのようだ。
参考:錆との戦い(下) – Nippon Steel Corporation
https://www.nipponsteel.com/company/nssmc/science/pdf/V3.pdf
わがインサイトの車体に使用されているのが何であるかは未確認だが、資料によるとホンダでは“単層合金化溶融亜鉛めっき鋼板”という材料を積極的に使用してきたようだ。
参考:https://www.jstage.jst.go.jp/article/sfj1989/44/10/44_10_795/_pdf
鋼板の防錆技術については大変興味深いところだが、いずれレポートするとしてひとまずさておき、12年目を迎えるわがインサイトの現状についてお伝えしよう。
このクルマがわが家にやって来たのが2016年。それまで岳父が所有していたクルマなのだが、買い換えのタイミングで、私がダダで譲り受けたのだ。
それまではマツダのロードスターNA8に乗っていたのだが、これは売却してドラム式洗濯乾燥機に化けた。
ちょうど子供が生まれるタイミングで、2シーターのオープンカーなんかに乗っていられない事情となったのである。ドラム式洗濯乾燥機は日々の暮らしにとても役立っている。乳幼児のいる共働き世帯にとって、乾燥機はマジで神である。
一方のインサイトであるが、これは子育て世帯にとって神とまでは言えず、ベストチョイスとすることはできないが、かといって何か大きな問題があるかといえば、そうしたこともない。
燃費向上のため空力を考慮して、車体後部の高さを絞るスタイリングのせいで、後席の天地方向の余裕が少なくなっているが、一般的なセダンと比べて極端に狭いわけではない。もちろんミニバンや軽ワゴンのような室内高はないが、そこまでの背の高さが子育て世帯のクルマに必須なわけではない。
乗り心地も満足いくレベルではないが、極めて劣悪というほどでもなく、インサイトは大衆車としての“どうでもよさ”をちょうどいいぐあいに身にまとっている。
なので私はこのクルマを「どうでもインサイト」と呼んでいる。
その昔に流行したホンダ・インテグラのキャッチコピー「かっこインテグラ」のパロディであるが、このインサイトは当時まだ特別だったハイブリッド車にもかかわらず、地味で没個性的で、ちょうどよいのである。
おそらく初代のインサイトが個性的だったのでその反動だと思われるが、私はこのどうでもよさが気に入っている。
話は戻るが、このどうでもいいインサイト、私の元に来てから4年でオドメーターの数字が10万kmを越えた。
インサイトはハイブリッド車なので当然、動力源としてモーターとバッテリーを搭載しているわけだが、このどちらもが、10年10万kmをこえてもなお、絶好調である。
ハイブリッド車の登場直後は、特に走行用バッテリーに対する耐久性面での不安の声が多く聞かれたが、実際のところは10年過ぎても「バッテリーはビンビンだぜ」だ。
むしろ、鉛バッテリーの方が私の手元に来てからでもすでに2回交換している。
では、どれくらいバッテリーはビンビンなのか。
これについては次回以降でお話ししたいと思う。(工藤考浩)