前回の本項では、エンジン始動と電装用のバッテリー(いわゆる普通の、ハイブリッドじゃないクルマにも積まれているバッテリ)は交換しているが、ハイブリッドの方のバッテリーはビンビンであるという話をした。
ところで、この「バッテリーはビンビン」というのはRCサクセションの名曲『雨あがりの夜空に』の一説である(わざわざ書くのはヤボだが)。
「この雨にやられてエンジンいかれちまった/俺らのポンコツとうとうつぶれちまった」という歌い出しのこの曲、内容の解釈にはさまざまあるが、実際にクルマが壊れてしまったという趣旨でないことは確かだ。
和洋問わずロックやポップスの歌詞に、クルマが壊れてしまうという表現はよく登場するが、だいたいの場合「クルマ」というのは何かのメタファーであって、実際にクルマが壊れてしまってはいない。
ほぼ例外なく隠喩であり、壊れたのは実際のクルマではない。
それはなぜか。
本当にクルマが壊れたときは、歌なんか歌っている場合ではないからである。
はてさて、なぜこんな話をしたかというと、このインサイト、一度だけ動かなくなってしまったことがある。
雨にやられたのではなく、バッテリーをあげてしまったのだ。
うっかりイグニッションオンのまま放置してしまったのが原因である。
ハイブリッドカーでも、バッテリーがあがるとお手上げで、キーをひねってもうんともすんとも言わない。
大容量のNi-MH(ニッケル水素)バッテリーを荷室下に積んでいるにもかかわらず、である。
当然、歌なんか歌っている余裕などない。
その時はロードサービスのお世話になり事なきを得たが、すぐに鉛バッテリーは交換した。
その一方で、モーター駆動用Ni-MHバッテリーは、現状で問題なく動作している。
このZE2型インサイトのメーターパネル内にはハイブリッド用バッテリーの充電状況を表示する機能が備わっている。
この表示、通常走行時はバッテリーの容量表示が最大8割程度で、長い下り坂などで満充電の表示となることが多い。
バッテリーの性能維持のため、常に満タン(という表現はそのうち使われなくなるのか……)ではなく、空きを残しているのだろう。ノートパソコンのバッテリーがそうであるように。
そのバッテリー表示を見る限りにおいても、性能の劣化は見てとれないし、実際の走行時におけるモーターアシストの感覚としても、劣化は感じない。
加速時にモーターアシストが足りないと感じたり、以前より力が弱くなったと感じることはない。
蓄電池の性能は、徐々にというよりある日突然ストンと低下する傾向にあるようだが、その「ある日」はまだやってきていない。
聞くところによると、インサイトや「フィット」に搭載されているこの世代のIMAは、ライバルであるトヨタ「プリウス」のハイブリッドシステムと比較してバッテリーの持ちがいいようだ。
もちろんその理由としてモーターアシストの仕組みが、思想の根本からして違っているというのがあるが、車両が生産されてから廃棄されるまでのトータルのコスト、あるいは環境負荷の点でどちらがどれくらい上回ったのか、知りたいところだ。
さて次回は、10万キロ越えで劣化してしまった部分について見ていこう。(工藤考浩)