中年男性、ママチャリに乗る 〜ブリヂストン「ステップクルーズ e」長期レポ〜<1>

ブリヂストンサイクル ステップクルーズ e

中年男性、ママチャリに乗る 〜ブリヂストン「ステップクルーズ e」長期レポ〜<1>

前輪に電動アシストのモーターを備える「デュアルドライブ(DUAL DRIVE)」が特長のブリヂストンサイクル「ステップクルーズ e」。チャイルドシートに子供を乗せて保育園を送迎しながら、両輪駆動シティサイクルの魅力をレポートする。

ブリヂストン ステップクルーズ e

日々、ママチャリに乗っている。

4歳の子供を保育園に送迎し、ついでに夕飯の買い物をしたり、ドラッグストアに日用品を買いに行ったり、まれにコンビニに第3のビールを買いに行ったりしている。

乗っているのはブリヂストンサイクルの「ステップクルーズ e」という電動アシスト自転車だ。
これにチャイルドシートを取り付けているので完全なるママチャリスタイルである。
前カゴも大きくて、通園バッグやおもらしした際の布団、さらに4リッターの焼酎などを積んでも楽々である。

ところで、ママチャリという言葉はいつ頃から使われているのだろうか。

ここ数年はジェンダー的な視点から公的な場面で使われることは少なくなっているように思えるが、10年くらい前には、役所が出す文書でも「軽快車(通称ママチャリ)」などのようにカッコ付きで表記されることがあった。

そもそも、日本だけではなく他の文化圏でも自転車の普及当初は、女性が乗るものではないという風潮はあったようだ。またがるのがよろしくないと避けられていたわけで、女性の乗馬は横向きとされていた欧州の風習が自転車に持ち込まれたのだろう。日本に自転車が伝わった時代、女性はまだ和装が中心だったり、高価なため一般には普及しなかったりであったが、第二次世界大戦前後になると、女性用の自転車というものが出てきたようだ。

資料:シティサイクルの誕生発展と社会文化との関わりの歴史
http://cycle-info.bpaj.or.jp/file_upload/100178/_main/100178_01.pdf

この資料によると、日本工業規格(JIS)の前身である日本標準規格(JES)には婦人用自転車という分類が存在していたし、昭和30年のJISにも婦人車との表記があったようだ。

さらに「シティサイクルの誕生発展と社会文化との関わりの歴史」から引用すると、戦後新規需要が一巡した自転車産業の営業戦略として

女性の中で乗ることができる割合が高いにも関わらず利用率の低い20代の主婦を対象にした自転車の製造販売で新たな層の開発を行い、全体の保有台数の底上げをめざした。そのための方針は自転車を花嫁道具として購入することを勧め、その結果として買物に便利でしかも美容と健康に役立つということをアピールし、昭和31年から実践を開始した。

という事情で、女性向け自転車の普及が始まったということらしい。

ママチャリの歴史を調べ始めると本一冊分になりそうなのでこの辺にして(なお、この資料はとてもおもしろいのでおすすめです)、そろそろステップクルーズ eの特徴である前輪モーターアシストについて話そう。

デュアルドライブが決め手

ステップクルーズ eの最大の特徴はモーターのアシストが前輪に働くシステムにある。

前輪部分にモーターがある

実のところこの自転車を子供の送迎で毎日乗っているのは私だが、自転車は妻のものだ。この辺の家庭内力学についてはいろいろな事情があるが、とにかくそういうことだ。

なので、数ある電動アシスト自転車の中からステップクルーズ eの購入を決めたのも妻なのだが、このデュアルドライブを強く妻に勧めたのは私だ。

以前、ブリヂストンサイクルの通学自転車「アルベルト e」の発表会を取材したときに初めて前輪をアシストする電動アシスト自転車に試乗したのだが、これが驚くくらい乗りやすく、すっかり気に入ってしまったのである。

一般的な電動アシスト自転車は、チェーンを回す部分にモーターを内蔵して、ペダルを踏む力をアシストする。
ところが、ブリヂストンのデュアルドライブは、前輪のハブにモーターを内蔵し、前輪を駆動する。
つまり、AWDなわけである。

電動アシスト自転車は、どの製品もこぎはじめのアシスト感が良くも悪くも独特で、個人の好みや慣れが乗車感覚に大きく影響するが、私はこの踏み始めると前輪にトルクがかかる感じに一目ぼれしてしまったのだ。

一目ぼれというものは往々にしてにゅるにゅるっと姿を消しがちであるが、保育園送迎担当になって半年を過ぎた今でも、乗るたびに心地よさを覚える。

私が自転車に乗るときは一時停止の標識を順守しているので(大事なことです)、そうではない人(いけないことです)に比べるとストップ・アンド・ゴーの回数が相当多いと思うが、発進時のふらつきに対して前輪アシストはかなり効果があるように思う。

そんなメリットの一方、これまで乗っていて感じた前輪アシストのデメリットを挙げると、ごくまれに前輪がスリップすることがある。
雨の日、後部に子供を乗せた状態で傾斜のあるところから走行モードを「パワー」にして発進すると、ほんの一瞬だけ前輪が空転する場合がある。
滑りやすい路面と後部に重心がかかったことで、踏力に対して前輪のグリップが足りず、結果的にアシストがかかりすぎてしまうのだろう。

ただ、感心なことにその空転はほんの一瞬で収まるので、危険を感じるほどではない。
空転を感知するセンサーがすぐにアシストを止めるのだろう。ギクシャクすることもなく、スムーズに次のひとこぎに進むことができる。
この現象の発生も頻繁ではなく、私のように再現性を探る目的でわざと同じような状況を試して、たまに発生する程度だ。この点では安全性に不安はない。

これはメーカーが、かなりがんばってチューニングしているんだろうなと想像する。

さらに、前輪アシストのメリットとして上げられるのが回生ブレーキと、それに伴う航続距離の長さ、すなわち電費のよさであるが、それについては次回に譲ろう。(工藤考浩)

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